とちの木の実

俳誌に連載中のエッセーと書評

白山山麓にて十一月句会

 今月は、山麓の紅葉も美しい白山市ギャラリー・ガレリアにて句会。

とてもすてきなギャラリーでした。オーナーの目の行き届いた展示品はどれもかなりエッジが効いていてしかも上品。みんな欲しくなってしまいます。

ランチもその後のデザートも美味でした。そんな嬉しい環境で句会。楽しかった!

まずは高点句から、といってもこんかいはかなりばらついていました。当然と言えば当然ですけど。だって価値観も好みもそれぞれ違う人間の集まりですからね。

 

傷癒えて群れ呼ぶ雁の夜更けかな   井上

 

怪我をした雁が群れを呼んでいる。切ない光景です。夜更けにそんな声を聴いたら寝付かれないことだろう…、うんうん、と思ってたらなんと井伏鱒二の「屋根の上のサワン」を本歌取りなさったのですって!もう読書家なんだから!

 

囲碁を打つ音の中より秋は来ぬ  くの一

 

盤上に碁石のピシッと当たる音が、秋の空気にひときわ冴えてひびく。良い句ですね。感覚の冴えだけでなく、機鋒の鋭さの感じられる句。

 

古戦場影絵となりて秋深し  小林

 

加賀の古戦場。源平の戦いで敗走する平家軍の中で討ち死にした斎藤実盛の首を洗ったという首洗い池を訪れての句だそうです。葦などが生えてものさびしい小さな池に木曽義仲を涙させた歴史がある。

御能に詳しく、ご著書もある作者には、彼らの姿が見えていたのでしょうね。「影絵となりて」という表現が、どうか、と問題になりました。「表現としてやや普通ではないか」「影だけでよくないか」などなど。御能の「実盛」をもっと出しても良かったかもしれませんね。

他に個人的気になった句には。

 

レース編む母の手元に烏瓜  松田

 

烏瓜の花は、花弁の先が糸のように分かれて儚げな、白い花です。レース編みに素晴らしく良く似合うとりあわせです。しかし レースも夏の季語、烏瓜の花も夏で季語が重なるのは確かです。でも非常に長い時間をかけて、編まれる芸術品のようなレースもありますし。私は美しい句とおもいました。

 

一房の影の重たき黒葡萄  くの一

 

灯火の下にくっきりと影を置く黒葡萄の存在感。影にさえも重みをかんじられるというほど、とは すごい。

 

あまり話題にしたくないのですが、今年、山里では、カメムシが異常発生しているようです。あまりの凄さに、いやなんですけどつい句にしてしまいました。

 

椿象(カメムシ)や紙飛行機に乗りて飛べ  おるか

 

飛んでどこかへ行ってほしい。