とちの木の実

俳誌に連載中のエッセーと書評

三月のMuse'e句会

オガタマの花

例年なら桜も辛夷も咲いているはずなのに今年は寒いのかまだほころびそうな気配すらない。それなのにオガタマだけは純白の花をつけてくれました。うれしい。

さて古九谷美術館のカフェ「茶房古九谷」での句会も四度目となりました。当季の句三句投句五句選です。

今回は何と満票の句がありました。

 

無垢という重さを垂るる白椿   くの一

 

椿の蕾でしょうか、その柔らかな重みは無垢というものそのものの重みであるという把握が、素晴らしい。

 「重さを垂るる」と「を」にしたところが作者らしい。普通なら「無垢というおもさに」垂るる、にするところでしょう。こちらもまた、無垢の重さに耐えかねて垂れている、という感じになって、それもまた面白いとおもいました。無垢であるのは、重いことでしょう。

作者は、無垢と白では、つきすぎかな、とお考えになったそうですが、白椿成功しているとおもいました。

 めったにない満票だったので、お祝いのお菓子(こちらのカフェでは最高得点の方には、台湾茶と季節の上生菓子のほかに特別なお菓子が出るんです。)もいつもより豪華でした。

さて次は四点句

 梅の香は夜気に紛れて後ろから  井上

 

作者の自解によると、やや鬱屈して歩いていて、梅の木を、花には気づかずとおりすぎたが、香りがしたので梅と気づいて振り返った、とのこと。凄く良い出会いじゃないですか!古今集

 春の夜の闇はあやなし梅の花色は見えねど香やはかくるる  凡河内躬恒

と歌われている梅の香り。

やや気になったのは「梅の香は」の「は」でしょうか。ここは感動を込めて「や」で切っても良いでしょう。そこまででなく、もっとさらっといきたいなら「梅の香の」。こちらも良いですね。なんだか難癖をつけまくってるみたいで気が引けますが「から」より、「後ろより」も落ち着くみたいな気も…。

三点句まいります。

 

淡雪や地に吸い込まれゆく途中   中井

 

たしかに春の淡雪は、地に触れると同時に儚くきえてゆきますね。おっしゃられた通り、地に吸い込まれてゆくようです。そのうえ「途中」ですから、恐ろしくほんのわずかな一瞬を認めていらっしゃるのですね。。でもこの途中がきいています。

 

靴下にさよならまるめ春の水  露花

 

靴下と一緒にさよならも丸めて洗濯しちゃうのでしょうか。感覚がおもしろいです。読みようによっては、かなり色っぽくもよめます。連句で出したら、恋句として戴ますでしょうね。

寝落ちしちゃいそうなので続きは、また後程・